目黒の階段を歩く!松本泰生さんと花房山・池田山から白金台へ
2026年10月24日(土)開催|ツアーレポート

白金台の階段を下から見上げる。段と手すりの向きの関係が印象に残ります。
手すりに沿って進みたいのに、足を置く段は斜め。白金台で出会った階段は、一段上るにも足の向きを考えてしまう形でした。ふだん何気なく上っている階段にも、こんな違いがあるんですね。
2026年10月24日(土)のWANDER×WONDERは、階段研究家の松本泰生さんと目黒から五反田へ。花房山、池田山、白金台をめぐり、お屋敷街の間にある小さな谷や階段をたどりました。雨模様の午後、配られた地図を手に、まずは目黒駅から歩き始めます。
花房山の階段で、松本さんにも新しい発見
花房山の住宅街へ入ると、家々の間に小さな谷が現れます。その谷へ下る階段で、松本さんが立ち止まりました。手すりがきれいになっている。そして、階段の下の方も以前と違うようです。
「前はね、もうちょっとここらへんまで出てたんですよ、階段が」
松本さんによると、以前は階段の端が片側へ広がっていたのだそう。今の形を前に、その広がり方を教えてくれました。

花房山の階段で、端の形に目を向ける場面。歩き慣れた階段にも発見があります。
さらに谷底の道を進むと、向こうに見えている場所へ、すんなり抜けられません。松本さんの説明では、もともと大きかった敷地を分割し、その中で道をつくったため、それぞれの敷地の中で行き止まりになる道が多いのだそう。
隣の道へ出るために、いったん駅の方へ戻ることもあります。近くに見えるのに、歩くと遠い。谷底からまた上り、回り道をしながら池田山へ向かいました。
池田山公園を、高い入口から池のほとりへ
池田山公園は、岡山藩池田家の下屋敷跡を整えた公園です。この日は高台側の入口から入りました。松本さんが示す坂の下には、もう一つの入口。公園の中に谷が入り込んでいるのだと教えてくれます。
木々の間をのぞくと、低いところに池が見えました。雨で滑らないよう足元に気をつけながら、池のほとりへ。下まで来ると、斜面を覆う木々の密度が印象に残ります。住宅街の道から入ったばかりなのに、まわりを緑に囲まれていました。

雨粒が波紋を広げる池田山公園の池。高い入口から、緑に包まれた池のほとりへ。
下りながら、このあとまたどこかで上ることも忘れずに予告する松本さん。低い側の入口から公園を出ると、次の谷と階段へ向かいます。
上大崎で聞いた、松本さん流の階段の数え方
公園を出て、寺院の集まる上大崎へ。ここで聞けたのが、松本さんならではの階段の数え方です。途中に道を挟んで、階段が上と下に続いている場所で――
「これはね、間に道が入ってるんで、個人的には別扱いに。」
上から下まで続けて通る人もいれば、途中の道へ曲がる人もいる。そこで松本さんは、上下を別々の階段として数えているのだそうです。何段あるかだけでなく、どの道とつながっているかも、階段を見るときの大事な点なのですね。
白金台の谷で、レンガの壁を見上げる
白金台では、大きな通りの近くに、道より一段低い場所が残っていました。松本さんが地図を示し、かつての川の流れと、谷が延びる方向を説明してくれます。
そこに残るレンガの壁も、まっすぐ一枚ではありません。階段状に奥へ引っ込み、ところどころには壁を支える出っ張りがあります。松本さんが示したのは「控え壁」。後ろの土に押される壁を、横から支える部分です。

白金台の谷で見上げたレンガの壁。手前に張り出した支えの形にも注目しました。
いつ造られたのかは、松本さんにもはっきり分からないとのこと。年代を確かめられなくても、斜面に宅地をつくるため、土をどう支えていたのかは目の前の形から考えられます。低い道から、壁の上にある土地を見上げました。
この一帯には、通り抜け禁止の階段もあります。住宅地や寺院を歩く際は現地の表示に従い、私道へ無断で入ったり、閉じた門の先へ進んだりしないようにしましょう。
ゆかしの杜と瑞聖寺で、建物の形を見比べる
途中で立ち寄ったのは、港区立郷土歴史館が入る「ゆかしの杜」。旧公衆衛生院の建物を保存・改修した施設です。ここで休憩を挟み、建物の外観も見ていきます。
柱の上部の飾り、半円を描くアーチ、外壁のタイルの濃淡。松本さんの話を聞きながら見上げると、一つの建物の中にも、見るところがいくつもあります。道沿いのレンガから、今度は建物の細部へと話が広がりました。

ゆかしの杜の外観。塔やアーチ、雨に濡れた前庭を一緒に眺めます。
続いて訪ねた瑞聖寺では、二段に重なって見える屋根に注目。松本さんが説明してくれたのは、建物のまわりに付けた、ひさし状の「裳階(もこし)」です。二階建てに見えても、屋根の数がそのまま階数になるわけではありません。

瑞聖寺の大雄宝殿。二重に見える屋根から、裳階の話へ。
この日は、通り抜けようとした門が閉まっていたため、来た方へ戻ることに。桑原坂へ回り、先ほど行こうとしていた階段の反対側へ出ました。
三田用水の跡から、小さな階段が次々と
三田用水の跡では、木が生えている一帯と、残された溝を眺めます。松本さんが、用水路の溝だと教えてくれました。案内板を見たあとは、その先の土地の高さにも注目します。
その先にも高いところがあるのではないか、と松本さん。途中で水の通り道を低くしてしまうと、水はそこから上れないと説明してくれました。足元に見える溝だけでなく、用水が先へどう続いていたかにも目を向けます。

三田用水路跡の案内板。背後の石組みとともに、かつての水の道をたどります。
「ここから小さな階段、めちゃめちゃ出てきます」
その言葉の通り、ここからは住宅の間に小さな階段が続きました。一つ上がった先にも、まだ次の階段があります。
足の向きと手すりの向きが違う、斜めの階段
住宅街で出会ったのは、進む方向に対して段が斜めになっている階段。松本さんが教えてくれた上りにくさの理由は、手すりとの関係にありました。
「ステップの歩く向きとね、手すりの向きが違うから。」
段に合わせて足を出そうとすると、手すりに沿う方向とはずれてしまいます。しかも、足を載せる「踏み面」の奥行きも小さめ。足の置き場を確かめながら、一段ずつ上っていきました。
さらに先には、道の真ん中だけに段がある階段も。手すりの位置が途中で反対側へ移っています。一段の高さは小さくても、道全体を見上げると、思った以上に急。上りきった先で、桜田通りへ出ました。
雉子神社を経て、五反田へ
終盤に訪れたのは、東五反田の雉子神社。ビルに囲まれた境内ですが、社殿の上には空が開けています。松本さんに促されて見上げたあとは、境内を出る階段へ。ここでも、神社とまわりの道の高さが違うことに気づきます。

ビルの柱に囲まれた雉子神社。社殿の上には空が開けています。
五反田駅の近くまで下り、およそ3時間のまち歩きが終了しました。雨の中でいくつも階段を通りましたが、とりわけ忘れられないのは、足の向きに迷った、あの斜めの一段です。
階段の端がどんな形をしているか。手すりはどちら側にあるか。途中の道はどこへつながるか。松本さんと歩いたあとは、いつもの階段でも、足元とその先を少しゆっくり眺めたくなります。
お屋敷街の高台と谷を歩き比べる面白さは、皆川典久さんと市ヶ谷から神楽坂へ歩いたツアーレポートでも紹介しています。市ヶ谷・神楽坂のスリバチ散歩を読む




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