新小岩の区境を歩く!小林政能さんと消えた境川をたどる
2026年10月18日(日)開催|ツアーレポート

香取神社の説明板を前に、小松菜ゆかりの話を聞きます。
道路を挟んで、こちらは葛飾区、向こうは江戸川区。けれど境界は、そのまままっすぐ続くとは限りません。小林さんと曲がる場所を確かめていくうち、歩道の幅や舗装の違いまで気になってきました。
2026年10月18日(日)、WANDER×WONDERでは、境界協会の小林政能さんと新小岩周辺を街歩き。葛飾区と江戸川区の区境、そして消えた境川の跡をたどりました。古い地図を手に、線路沿いの神社や小松菜ゆかりの地にも立ち寄ります。
抜け上がった井戸で、地盤沈下を見る
新小岩駅を出発し、細い道や車止めの先に水路の跡を探していきます。小林さんが足を止めたのは、東京都第五建設事務所の前。敷地の奥には、地面から突き出した金属の管が見えます。
地盤沈下で抜け上がった井戸です。この日は敷地内に入らず、外から見える範囲で眺めました。
小林さんによると、深いところまで届く井戸の周囲で地面が沈み、管が突き出した姿になったのだそう。地下水のくみ上げなどで沈下が進んだ経過を、資料のグラフでも確かめます。
「止まるは止まったと。ただ戻りはしないです。」
くみ上げを抑えて沈下が落ち着いても、地面の高さまで元に戻るわけではない。説明を聞いて管を見直すと、かつての地面が、今より上にあったことが分かります。

敷地の外から、井戸のある方を示す小林さん。
線路のすぐ脇に残る、下小松天祖神社
続いて、旧国鉄の工場があった一帯や新小岩信号場の周辺へ。地図で線路のつながりを確かめ、線路を越える階段に向かいます。
「今日最大の登りですから付き合ってください」
階段を上り、線路の配置を上から眺めて反対側へ。下小松天祖神社でお参りをすませると、小林さんは拝殿の脇へ向かいました。すぐ近くを線路が通っています。
「神社が先で線路が後ですよね」
小林さんの説明では、もともと神社の敷地はもっと広く、線路を増やす際に一部を譲ったのだそう。年代の違う地図で、敷地と線路の位置を確かめます。今の近さだけを見ていては分からない、神社と鉄道の関係でした。

下小松天祖神社のすぐ横を通る、黄色い電車。神社と線路の近さが分かります。
広い歩道とマンホールから、境川の跡へ
神社を出ると、片側だけ歩道がずいぶん広い道に出ました。小林さんが示すマンホールも、その広い歩道に沿って並んでいます。
資料の地図には、道と並んで川が描かれています。小林さんによると、今の広い歩道の側が水路だったところ。左右の道幅とマンホールの位置を見比べると、どこに川があったのかを想像しやすくなります。

川の跡として案内された、片側の広い歩道を見渡します。
さらに進むと、道路脇のガードパイプの形にも違いが。小林さんが示す葛飾区のものと、江戸川区のものを見比べます。住所の表示も確かめると、ここが二つの区の境だと分かりました。
やがて、小松川境川親水公園へ。小林さんは案内板と地図を示し、境川がかつて村を分けていたことを教えてくれました。今もこの付近では、川の跡と区境が重なっています。水路を追ってきた道が、そのまま境界をたどる道になりました。

小松川境川親水公園の案内図。葛飾区と江戸川区の名が並びます。
近くに二つの天祖神社があるのは、なぜ?
途中の於玉稲荷神社では、神田のお玉が池にあった神社が、明治になってここへ移ったというお話も。住宅街の神社から、江戸の中心部へと話が広がります。
続いて訪ねたのは、本一色天祖神社。先ほどの下小松天祖神社から、そう遠くありません。近い場所に、なぜ同じ名前の神社が二つあるのでしょうか。
「こことここで村がもともと違うわけです」
小林さんが指すのは、境川を挟んだ二つの村です。今は住宅街が続いていますが、もとは別々の村で、それぞれに天祖神社があったのだそう。何気なく越えてきた川の跡を、地図でもう一度確かめました。

境川を越えた先で訪ねた、本一色天祖神社の鳥居。
区境から寄り道して、小松菜ゆかりの香取神社へ
境川沿いに戻ると、途中で区境を示す線が川の跡から離れ、曲がっていきます。市民農園のフェンスや塀の位置と、地図の線を見比べていると――
「ここが今、オンザラインです。」
境界線の上だと教えてもらっても、足元はふつうの道。塀の位置と地図の線を見比べたあとは、いったん区境を離れ、神社へ向かいました。
訪ねたのは、新小岩間々井香取神社。ここで小林さんが紹介してくれたのは、将軍の鷹狩りと青菜の話です。徳川吉宗がこの地で食べた青菜を気に入り、「小松菜」と名付けたと伝わっています。
境内の説明板を見たあとには、近くの「小松菜屋敷」へ。現在も人が暮らしているため、敷地内には入らず、外の案内板を見ながら話を聞きました。
住宅街の区境で、「キスマーク」を発見
再び葛飾区と江戸川区の境を追いかけます。住宅街では、道路の塗り方や舗装が変わるところで立ち止まり、電柱や消火器などにある区名やマークを確かめました。
ここで、小林さんにも新しい発見が。
「ゲットだぜ、キスマークゲットだぜ。今日最大の発見かも。」
二つのマークがキスをしているように見えることから、小林さんたちがそう呼んでいるのだそう。地図と道路を見比べる途中で、こんな小さな印にも声が弾みます。

二つの矢印が向かい合う境界標。小林さんたちが「キスマーク」と呼ぶ印です。
商店街の通りへ出ても、境界探しは続きます。ルミエール商店街へとつながる道で左右の区を確かめ、その先で区境が折れる場所を探しました。商工会の名が入った街路灯も、あるところで途切れています。小林さんに言われて、来た道とその先を見比べました。

舗装の違いと、車止めのある細い道を見比べます。
碁盤目の街は、田んぼの区画を受け継いでいた
終盤、小林さんは年代の違う地図を並べます。ある時期から、碁盤目のような四角い区切りが現れました。家を建てるための区画なのでしょうか。
小林さんが資料を示して説明するのは、農地の区画や水路を整える「耕地整理」です。
「田んぼのためってことですね」
このあたりでは、農地のために整えられた区画が、今の住宅街へ引き継がれているのだそうです。先ほど歩いた、水路の跡を思わせる細い道も、その地図と見比べます。家が建つ前の土地の使い方が、今の道の形にも残っていました。
新小岩駅周辺へ戻り、この日のまち歩きは終了。川を挟んだ二つの神社、川から離れて曲がる区境、田んぼから引き継がれた街の区画。立ち止まるたびに見てきたものが、地図の上でつながっていきました。
そして、小林さんが「今日最大の発見かも」と喜んだ、小さなマークも。次に新小岩を歩くときには、広い歩道や道路脇の印の前で、つい足を止めてしまいそうです。
小林さんと街に残る水辺の跡をたどるまち歩きは、虎ノ門から四ツ谷へ歩いたツアーレポートでも紹介しています。




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