top of page
WANDER×WONDER

なぜ薩摩琵琶は、あれほど強く叩くのか? 櫻井亜木子さんの琵琶語り『乳房榎』|2026年8月29日(土)〖浅草〗文化体験レポート

  • 3 時間前
  • 読了時間: 2分

終演後、参加者から、あれほど強く叩いて琵琶は傷まないのか、という質問が上がりました。


櫻井亜木子さんの手にあるのは、先端が大きく開いた扇型の撥。演奏中、撥が琵琶の表板を打つたび、弦の音とは違う鋭い響きが会場に残ります。


2026年8月29日(土)、ワンダーワンダー(WANDER x WONDER)では、Tokyo Tourist Lounge Asakusaで「〖日本文化体験・琵琶語り〗音でよみがえる江戸怪談『乳房榎』」を開催しました。演者は、琵琶奏者の櫻井亜木子さんです。


茶菓と怪談から、琵琶語りの夜へ


会は、茶菓を楽しみながら始まりました。


今回の演目は、三遊亭円朝の怪談噺『乳房榎』。長い物語を約1時間に凝縮し、琵琶と語りで届けます。


はじめに櫻井さんが話したのは、怪談で涼を取る夏の文化と「丑三つ時」のこと。時刻をめぐって客席とやり取りした後、ゲスト奏者の笛と短い怪談が続きます。照明が落ちると、櫻井さんの『乳房榎』が始まりました。

明るい会場で薩摩琵琶を構える櫻井亜木子さん
『乳房榎』の上演を前に、薩摩琵琶を構える櫻井亜木子さん

『乳房榎』は、絵師の一家をめぐる怪異が、赤塚の「乳房榎」の伝承へつながる物語です。


薩摩琵琶はなぜ強く叩く? 構造と撥の特徴


拍手の後は、写真撮影と質疑の時間です。そこで出たのが、冒頭の質問でした。


櫻井さんは実物を示しながら、薩摩琵琶には硬い桑が使われ、この撥はツゲで作られていることを説明します。


日本芸術文化振興会の文化デジタルライブラリーによると、薩摩琵琶は、力強い演奏のために楽器を盲僧琵琶より大きくし、腹板を膨らませ、硬い桑を用いるよう改良されました。楽器を縦に抱え、大きな扇型の撥で表板を打ちます。


同資料では、撥を表板へ打ちつけ、戦の情景を表す「崩れ」という奏法も紹介されています。当日、櫻井さんは琵琶と撥を示しながら、この力強い音の理由を説明しました。


決めすぎないから、その夜の音になる


質疑は、楽器の材質から演奏の組み立て方へ広がりました。


櫻井さんによると、古典の琵琶曲には「手」と呼ばれる、ある程度決まった演奏フレーズがあります。一方、今回のような語り物では、準備した音の材料を、その日の流れに合わせて組み替えていくそうです。


この日の終盤には、糸巻きが緩む場面もありました。いったん止めて直すか、使う音を減らして物語を進めるか。櫻井さんは、その場で後者を選びました。


止まらずに進んだ演奏の裏で、そんな選択があったことを、参加者は終演後に知りました。


最後に櫻井さんは、歩きやすい季節になったら赤塚を訪れ、乳房榎の木の下でまた会いたい、と話しました。

コメント


bottom of page